原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

ものに依存しない生き方

アルボムッレ・スマナサーラ
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現世利益に達する道と、
涅槃に達する道と、
まったく相反する道がある。
このことわりを知っている仏弟子たちは、
名誉を喜ばないほうがよい。
そして離欲の道を歩めばよい。

                   「ダンマパダ」(75)

画像・AdobeStock

「建物が必要だ。道路が必要だ。飛行場が必要だ」「エネルギーがたくさん必要だ。原発も必要だ」「もっと経済成長が必要だ」……。わたしたちの社会は、つくってはこわし、つくってはこわしというサイクルになっています。そのサイクルをやめたら、駄目になってしまうと思い込んでいます。しかしそれは自己破壊のサイクルで、行き着くところは、地球の破壊です。

わたしたちは「あれが欲しい、これが欲しい」「まだ足りない」と走りまわっています。一時的に欲を満たしても、またさらなる欲がでてきます。それでは、いつまでたっても満たされることはありません。ずっと燃えつづける炎のようなものです。

わたしたちは、いつも「貪瞋痴」という煩悩の炎で燃えつづけているのです。欲しいものをあげるというのは燃料を与えていることになります。炎は消えることなくさらに燃えて、さらに燃料を求めることになるのです。だから、燃料がいくらあっても足りないのです。わたしたちの欲が尽きることはありません。

すべての問題は心にあります。お釈迦さまは、この世の中は、「現世利益に達する道」で、それは「苦しみの道」であると言われます。だから、「涅槃(永遠の安らぎ)に達する道」を説かれたのです。

利得を追っていたのでは、いつまでたっても心は平安になりません。追えば追うほど、安らぎがなくなってしまいます。ものやかたちに依存した生き方は、車に荷物を積めば積むほど、重たくなって動けなくなるようなものです。ものだけではなく、財産や地位や肩書きなども同じです。ふえればふえるほど、息苦しくなるのです。

なにものにも依存しない生き方こそが、「安らぎに至る道」なのです。

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