会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
時給500円の皿洗いバイトから再出発
少しずつ前向きに考えられるようになった頃、先輩ホームレスの紹介で天王寺公園の裏のうどん屋さんへアルバイトに行くことになりました。ホームレス生活から抜け出せなくなる前に、なんとか働こうと思ったのです。
仕事は皿洗い。時給は500円と安かったですが、1日5時間働いて2500円を得ました。そのときの私にとっては大金でした。暑い盛りでしたから、ちょっとだけ贅沢して、アイスクリームを買いました。キンキンに冷えたアイスバーの美味しさは今も忘れられません。そして久しぶりの銭湯。生き返るほどの心地良さでした。それからは週2回銭湯に行き、コインランドリーで洗濯もできるようになり、心の余裕がほんの少し出てきました。
そんなある日、私が公私ともども、仲の良かったクライアントの社長の声が聞きたくなりました。
公衆電話から久し振りに電話をした時のことです。
「社長、ご無沙汰しています」
しかし、社長の第一声はこうでした。
「岸田さんを紹介した人たちに合わす顔がない」
怒りをかみ殺したような声です。
「申し訳ありません・・・」
私は受話器を手に何度も頭を下げました。
「もう二度と電話をしてこないでくれ!」
この言葉と同時に、電話がガチャっと切られてしまいました。
自分の甘さと世の中の厳しさを思い知らされた瞬間です。ホームレスになっても大事にとっていたアドレス帳ですが、仕事やプライベートでお付き合いのあった方々の連絡先のページを全て破り捨てました。もう誰かを当てにしてはいけないと思ったからです。
いままでの人脈やつきあいを断ち切り、私はゼロから出発しようと考えました。
(次週に続く)
岸田さんのブログ