会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
どこまでも両親の子供でありたい
両親と最後に会ったのは、私が社員による持ち逃げ詐欺に遭って縁を切られた時です。その頃の私は、疲れ果てて世の中に背を向けていました。両親にとって、その時の私の一番つらい顔が最後でした。もっと元気な顔で別れたかったと今でも思います。何と親不孝な息子だったのでしょう。
私は長男ですが、何で縁まで切られなければいけないのかと思ったものです。しかし、両親からすれば縁を切ることは、凄くつらかったと思います。こいつなら必ず這い上がってくると信じながらも断腸の思いだったことでしょう。当時の私は、そんな親の気持ちを察する余裕さえありませんでした。いつか見返してやるという反骨心が強かったのです。ライオンは自分の子どもを崖から落とすといいますが、両親も同じ気持ちだったのかもしれません。きっと私よりも両親の方がつらかったことでしょう。
何歳になったとしても私は両親のことを自慢できます。厳しく躾けられたおかげで、苦境から這い上がることができたのですから。親は親で子は子です。唯一無二な存在なのです。子どもとして最後を見届けることができなかったことは、一生、私の罪として付いてくるかもしれませんが、親に対する気持ちは誰にも負けないと言える自信はあります。今度、生まれ変わったとしても両親の子どもに生まれたいと思います。
今でも、夜一人でいると両親のことが思い出されて涙することもありますが、泣いてばかりいても両親は喜ばないでしょう。もっと立派になって私たちを喜ばせてくれと言われているような気がする時もあります。それが私を前に突き進ませる原動力の一つにもなっているのです。ご先祖を供養するということは、感謝の気持ちを伝えると共に、自分と向き合い、生きる意味を考える要素もあるのです。
(次週に続く)
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