会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
お守りになった1万円札
さぁ、これから仕事を頑張るぞ!!と思った時、あることが心に引っかかっていました。それは、私の会社のメインバンクだったM銀行の一人の行員Bさんのことです。創業のころから親身になって相談に乗ってくれ、会社のためにひと肌もふた肌も脱いでくれた方でした。ところが私が持ち逃げ詐欺に遭った時に多額の債務を抱え、解決されていなかったのです。Bさんに不義理なことをしてしまったと、後悔に苛まれ続けていました。
すると、まるで私の気持ちを読んでいるように、Bさんから電話がかかってきました。「一度、お会いしませんか? 銀行では話しづらいので、どこかの喫茶店ででも」と。私は嫌味や文句を言われることを覚悟で、天王寺公園近くの喫茶店で会うことにしました。
待ち合わせ場所の喫茶店に行くと、Bさんは笑顔でむかえてくれたのです。コーヒーを飲みながら雑談話をしていると、突然、Bさんはいいました。「岸田さんが生きていてくれて私は嬉しいです。銀行から借り入れているお金は返済する必要はありませんよ」。「いったいどういうことですか?」と私。するとBさんは「返済するお金があったら、これからの岸田さんの人生のために使ってください。時効までの10年間、銀行や債権回収会社からしつこく督促や電話があると思いますが、我慢して乗り越えてください」。私はポカーンとした感じで聞いていました。でも、一つ肩の荷が下りた感じでした。
私の現状やこれからの仕事のことなどを話し終えた後に、Bさんから一枚の茶封筒を手渡されました。「これは何ですか?」と私。封筒の中身を見るとなんと1万円札が入っていたのです。「岸田さんには大変、お世話になりました。うちの銀行のために無理難題も聞いていただいて感謝しています。これは少ないですが何かの足しにしてください。これからの岸田さんの活躍を楽しみにしています」。私はBさんの温かい言葉と気遣いに涙が止まりませんでした。その1万円札は今でも机の引き出しに御守りとして大事にしています。
喫茶店を出て、そこでお別れをしましたが、私は駅に向かうBさんの背中を見ながら、こう誓ったのです。
「Bさん、見ていてください。必ず這い上がって人に恥じない生き方をしてみせます」
(次週に続く)
岸田さんのブログ