会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
C社長が行方不明
画像・AdobeStock
借金に苦しむC社長と、われわれ問題解決のためのチームとの打ち合わせが始まりました。過去5年間の帳簿類等を確認しながら、再生させるための手順を確認していきましたが、何かがおかしい。帳簿類の数字が合いません。帳簿通りなら業績はもっと順調なはずなのです。「C社長、何か隠していませんか? 正直に言っていただけないと、こちらとしても協力できません」。するとC社長は気まずそうに、引き出しから別の帳簿を出してきたのです。
私たちは、その帳簿に目を通したのですが、一瞬凍り付きそうになりました。それは裏帳簿だったのです。数字を見ると、よくこれで会社を回して来られたなぁというような酷い数字でした。最初の仕事がこれかぁと愕然としましたが、仕事を引き受けた以上、途中で投げ出すわけにはいきません。一度、帳簿を持ち帰ってチームで分析することにしました。それから1週間程した夜、1本の電話が。「こんな夜遅くに誰なのだろう?」と電話に出てみると、C社長の奥様でした。
その電話に嫌な予感がしました。
「どうされました?」
「主人が行方不明なんです。キッチンにあった包丁と倉庫にあったロープが無くなっています」
「すぐに警察に電話をしてください。私は、朝一番でそちらに向かいます」
気掛かりでなかなか寝ることもできません。明け方に、また奥様から電話がありました。「警察から連絡がありました。主人が琵琶湖で見つかりました。元気だそうです」と奥様の安堵の声に、私もホッとしました。
私は始発の電車でC社長の自宅に行きました。しばらくしてC社長が警察から帰ってきました。事情を聞くと、お金を借りていた悪徳業者から脅迫され、命と引き換えにお金を作れと言われたそうです。それは、また保険金目当てで契約を迫る話だったのです。こんな脅しがこれからも続くのかと思うと、苦しくて苦しくてどうしようもなかったそうです。死ねば借金も返せて楽になると思い、琵琶湖に向かったそうです。ところが午前4時頃、入水自殺しようと思っているところにお坊さんが通りかかり、説教されて自殺を思いとどまったそうです。そんな早朝に湖畔をお坊さんが歩いているのは不思議な話ですが、C社長は守られていたのでしょうか。いまとなっては謎です。
C社長が自殺まで考えていたことをどうして気付いてあげられなかったのかと私は唇をかみ締めました。その悪徳業者は後日、警察に逮捕され、C社長は会社再建への道を歩み始めました。私はC社長に言いました。「社長には家族も家もあるじゃないですか。私なんてお金どころか家族も家もすべて失いましたよ。それでも、一生懸命に生きています。これからは、社長は家族を守るような生き方をしてください」と。
(次週に続く)
岸田さんのブログ