会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
嘘の株式一般公開
画像・AdobeStock
友人の紹介で、ある事業に出資をしました。会長と呼ばれていた事業の責任者は、非常に話がうまく、私はすっかりその話を信じていました。
半年が経った頃でしょうか。会長が突然、「会社の株を一般公開することになったので、出資してもらっているお金は株に変わります」と言ってきたのです。これは嘘だろうと思いましたが、詳細を聞くと、証券会社の名前も出し、かなり具体的な内容で信憑性がありました。「一般公開すると今の出資金の何千倍もの価値になるから、その方が得ですよ」と言われたため、私もお金に目が眩んでしまいました。会社に貸したお金が、いつの間にか株券という投資話に変わっていったのです。今思えば、借りていたお金の返済ができなくなり、株券という悪知恵で誤魔化そうとしたのでしょう。
その数日後、「株主総会を開催するので出資している人は出席してください。出席できない人は株主の権利はありません」との通知が来ました。それ自体あり得ないことです。出資しているのに、株主総会に出席しないと出資金は消えて戻って来ませんといっているのと同じです。
私は株主総会に出席しましたが、出資者のほとんどの人は喜んでいました。そこから本格的なお金のむしり取りが始まります。「株の一般公開をするのにお金が足りない」「フィリピンで借りていたお金を倍返ししないと、この話は無くなってしまう」というように事あるごとにお金を集めるようになってきたのです。「会長、世界を動かすだけのゴールドがあるのだったら、日本に送ってください」と私が言うと、いつも「ゴールドを日本に送ろうと思っても前科があるから途中で止められて送れない」との返事です。その辺りから怪しいと感じ始めました。
他の出資者は、会長をまだ信じていましたが、その頃には、もう時すでに遅しでした。私も、合計約2500万円を出資していたのです。その後、何度も株主総会を開催し、言い訳の上塗りで出資者を信じ込ませていたので、今でも株が一般公開されるのを心待ちにしている人が多くいます。私たちが出資したお金は、いったいどこに消えたのか? 調べた結果、会長の個人的な借入金の返済と自宅の改築費用に消えたことが分かってきました。
最初から、そのために私たちを利用してお金を集める魂胆だったのです。ゴールドも現金も持っていません。最初に大きなことを言っていましたが、全て嘘だったのです。しかし会長本人は、悪いことをしたとは思っていません。騙される方が悪いという考えです。詐欺師とはそういうものなのです。
(次週に続く)
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