会社経営者だった岸田さんは
多額の持ち逃げに遭い、会社は倒産。
伴侶にも逃げられ、ホームレス生活を送り、
自殺一歩手前まで追い詰められたといいます。
現在は悩める経営者の支援と社会貢献に生きがいを見出す岸田さんが、
ホームレス生活から立ち直るまでと
「運とご縁の引き寄せ方」を赤裸々に語っていきます――。
治療の始まり
画像・AdobeStock
自分は心の病であることが分かって、悲しかった反面、ホッとした一面もありました。治すために自分に向き合うことができるのですから。長い長い治療の始まりです。
当時、一番つらかったことは、寝ているときに、詐欺に遭ったころの様子が夢でフラッシュバックすることでした。詐欺に遭って右往左往している様子、金融機関からの連日の督促状で悩んでいる様子、発注先への支払いができなくて電話での督促、裁判所からの呼び出し、妻子に追い出された時の様子・・・等、そんな夢に苦しくて飛び起きる日々が続いていました。拳を握り締め、目からは涙が。治療のおかげで徐々にフラッシュバックは治まってきましたが、今でも一年に何回かはフラッシュッバックで飛び起きることがあります。人の脳というのは繊細なのですね。
医師から「時間は掛かるけど、ゆっくりと治していきましょう」と言われた時、心の中で「すぐに完治する薬があれば、高くても払う」と叫んだものです。それほど、つらいものでした。
私が通院した心療内科では、最初にテストがあります。今の私の脳と心の状態を見るために一週間かけて、いろいろなテストがありました。積み木であったり、箱庭を作ったり、知恵の輪を解いたり、数字の筆記テストであったり、毎日のように行われます。その結果が出る日、何を言われるか戦々恐々でしたが、医師に言われたことは、「岸田さん、脳の状態や知的レベルには何も問題はありません」「しかし、うつ病とパニック障害の病状は非常に重いです」。喜べばいいのか悲しめばいいのか。
しかし、これ以上悪くなることはないと腹をくくると、気持ちが楽になりました。
まず処方された薬を飲み始めましたが、頭がボーッとするだけでなく、一日中眠気に陥りました。一日中、家でダラリダラリとする生活が続きます。なにもやる気が起こりません。サボっているのではなく、そういう薬なのだから仕方がないと思うようにしました。
(次週に続く)
岸田さんのブログ