お父さんのための介護教室

第3回「負のスパイラルからの転換」

医師 髙瀬 義昌
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問題のない家族などいない

最も肝心なことはさまざまな症状が出現する認知症への知識を深めることです。認知症という病気を客観的に受け入れるために、病院で血液検査や画像診断を受けて、脳の状態や、身体的な状況を把握し、種類によっては薬との併用で対応できる病気なのかを、可視的に認識することは大事なことです。認知症に対する理解が深まれば虐待が減るということはデータにも表われています。

その知識が不十分だと、認知症による言動を理解できず、虐待につながるケースは少なくなりません。しかも、認知症の人は虐待を受けていてもあまり自覚できず、助けを求めることができません。それだけに介護する側や周囲の人が認知症を正しく理解することが大切です。

介護に取り組む男性にお伝えしたいのは、問題のない家族などないということです。問題があるのは当たり前。介護についての悩みがあれば、それを一人で抱え込まないことです。周囲の人も少しでも「おかしい」と虐待の兆候を見つけたときは、まず地域包括支援センターへ連絡してください。それが負のスパイラルから転換する第一歩です。

髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
たかせクリニック理事長
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
1956年、兵庫県生まれ。信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了、医学博士。麻酔科、小児科研修を経て、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。著書に『これで安心 はじめての認知症介護』など。
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