お父さんのための介護教室

第4回 孤立化した介護は、負担も増大

医師 髙瀬 義昌
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(写真・PIXTA)

心の扉を開く

そういう男性の心を開くのに必要な技術があるとすれば、やはり北風と太陽のたとえのように、太陽作戦が有効なんですね。専門用語では「アイスブレーキング」といいますが、氷を溶かすようにふれあう気持ちのことです。

最近、私が気に入っている英語の言葉に「nudge(ナッジ)」という言葉があります。スッと後押しをするという意味です。私たちが、在宅医療の現場でふれあっている自宅介護に取り組む人が、自分のいままでの見方を少し変えようかなとか、少し心のバリアをなくそうかと思ったときの心がけです。かなり頑固な人でも、ジッと見守り、待ちながらふれあっていると、心を開いてこちらの話を聞いてくれるタイミングはあります。

確かに、自分の介護法に頑固にこだわるのも一生懸命さの表われだと思います。虐待にいたるのもある意味、一生懸命の結果なのかもしれません。

しかし、虐待に至る前に、つらい介護の状況を改善できるきっかけがあるとすれば、やはり、上手に他者のアドバイスを受け入れられるように、いかに自分の心の扉を開いていけるかどうかにかかっているのではないでしょうか。

五十代、六十代になって親や妻の介護に携わるということは、ある意味、それまでの生き方を見つめ直し、自分の心を解放し、人間的にも成長するきっかけになることかもしれません。

認知症を根本的に治す薬はまだありませんが、最近は認知症の進行を抑える薬が出てきました。その薬の組み合わせによっては、人物を認識できるようになったり、「物盗られ妄想」がなくなるなど、劇的に症状が改善される確率も上がっています。

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