原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

怒るといちばん最初に自分が汚染される

アルボムッレ・スマナサーラ
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画像・AdobeStock

あなたが、ある人を憎んでいるとします。

しかし、相手はあなたが憎んでいることを知らなければ、相手にとっては、どうってことはないのです。
あなたの怒りを知っていても、気にしなければ、それだけのことでしょう。

怒るのは、汚物を投げつけるようなものです。投げつけるためには、まず自分がその汚物を手に取らなくてはなりません。自分で自分の手を汚すのです。汚物を投げつけても、相手がひょいとよけたとしたら、汚れるのは自分だけです。

さらに、人を憎むと、憎んでいる相手と、いつもいっしょにいることになります。憎んでいる相手が、いつも心のなかにいて、いつも思いだされるからです。だから、ますます苦しむことになります。

衣服に一つの小さな汚れがついたとします。その汚れを取るために、あっちこっち拭いて、汚れを広げる必要はありません。それは放っておけばいいのです。

そのように、相手から受けた怨みは放っておけばよいのです。たとえ相手が悪人であっても、みずからが怒りや憎しみをいだいたら、自分自身が損をするだけなのです。

自分が怒りで汚れてしまえば、自分も悪人も、もうすでにどこか似ているのです。

*  *  *

「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
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