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あなたが、ある人を憎んでいるとします。
しかし、相手はあなたが憎んでいることを知らなければ、相手にとっては、どうってことはないのです。
あなたの怒りを知っていても、気にしなければ、それだけのことでしょう。
怒るのは、汚物を投げつけるようなものです。投げつけるためには、まず自分がその汚物を手に取らなくてはなりません。自分で自分の手を汚すのです。汚物を投げつけても、相手がひょいとよけたとしたら、汚れるのは自分だけです。
さらに、人を憎むと、憎んでいる相手と、いつもいっしょにいることになります。憎んでいる相手が、いつも心のなかにいて、いつも思いだされるからです。だから、ますます苦しむことになります。
衣服に一つの小さな汚れがついたとします。その汚れを取るために、あっちこっち拭いて、汚れを広げる必要はありません。それは放っておけばいいのです。
そのように、相手から受けた怨みは放っておけばよいのです。たとえ相手が悪人であっても、みずからが怒りや憎しみをいだいたら、自分自身が損をするだけなのです。
自分が怒りで汚れてしまえば、自分も悪人も、もうすでにどこか似ているのです。
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「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。
アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
バックナンバー「 原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話」