薬が原因でつくられる認知症も
病院で複数の診療科にかかっている認知症の方は、さらに薬の量が増えます。精神科の薬のほか、糖尿病や心臓病、膝などの痛みを緩和する薬などが加わり、数十種類の薬を服用している方も珍しくありません。
このような多剤併用は、それぞれの診療科の医師が別個に処方しているため、好ましくない薬の組み合わせになっていたり、同じ薬が重複して出ていることも少なくありません。そのような間違った薬の処方を正すことで、認知症の周辺症状が治まり、大幅に改善されるケースはよくあります。
どんな薬にもいえることですが、医師や薬剤師が、患者さんの様子に応じて、こまめに投与量を調整し、できるだけ副作用が出ないように配慮することが大事です。最近では、関連する学会でも、高齢者に対して薬の投与量を減らそうという方向で動いているようです。
とくに、認知症で処方する向精神薬剤の扱い方は難しいものです。それは、中枢神経に作用して、精神の活動に影響を及ぼすからです。介護に携わる場合、簡単に薬の量が増やされるときは注意したほうがいいでしょう。
以前、精神疾患は、多剤併用をしないと症状を抑えるのは難しいと考えられていました。しかし、現在は抗認知症薬の「アリセプト」や「メマリー」など、より少ない種類の薬で対応できる薬もあります。また、ゼリー剤や、貼るタイプのパッチ剤などもあり、薬の型においてもさまざまな工夫がなされています。
介護に携わる方々は、以上のことを知った上で、地域の医師、看護師、薬剤師と薬を減らしてケアを手厚くしていく。つまり、患者さんの生活の質(QOL)を上げる方向で介護の相談をされることをお勧めします。
たかせクリニック理事長
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
1956年、兵庫県生まれ。信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了、医学博士。麻酔科、小児科研修を経て、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。著書に『これで安心 はじめての認知症介護』など。
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