世の中のあらゆる破壊の原因は、怒りにあります。
国の政治を司る人が怒りに燃えていると、その国は戦争を起こすかもしれません。世界の歴史を観ると、そういう愚かな事例がたくさんあります。
だから怒ってはいけません。いくら自分が正しくて相手が間違っていても、けっして人を怒らせてはなりません。
ある人が、わたしにたいして、なにか気にくわないことがあって怒ったとします。それにたいしてわたしが怒れば、相手の怒りはさらに「怒るとはなにごとか!」と増幅するでしょう。わたしもまた応酬して怒れば、相手はもっと怒りをつのらせます。
このように、いちど怒りを起こすと、それは二倍、四倍、八倍……と、怒りの炎はどんどんと燃え盛っていくのです。まるで小さなマッチの火が、木から森に、森から山へつぎつぎと燃え移っていくように、たった二人の喧嘩の火種が、ときには国と国との戦争をも引き起こすことさえあります。
だから、なにを言われても、なにをされても、自分の心に怒りの火を点けないことです。
人からののしられたり、「ぶんなぐるぞ」と言われても、「ああ、この人はわたしにかなり怒っているなあ」──ただ、そう受け取るだけでいいのです。そうすれば、それ以上はなにも起こりません。
わざわざ争いの渦に飛び込むことはないのです。
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「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。
アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
バックナンバー「 原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話」