原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

すべての争いはプライドがあるから起きる

アルボムッレ・スマナサーラ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

プライドとは、言い換えれば「自我」です。自我とは「わたしがここにいる」「わたしは偉い」という実感のことです。
人間の苦しみ、悲しみ、そして戦争などのあらゆる問題は、この「自我という実感」がつくりだしているのです。

人は「わたし」という自分の尊厳を傷つけられると、心は怒りに満ちてきます。
この「わたし」という実感が、「わたしの家族」「わたしの会社」「わたしの国」というふうに拡大され、妄想がふくらんで、そこに大きな争いが起きてしまうわけです。

太平洋戦争のとき、アメリカは日本に原爆を落としました。それは、「世界一強くて偉大な国であるアメリカを日本は侮辱した。だから、わが国の力を見せつけてやるのだ」という思いからでしょう。またニューヨークで「同時多発テロ事件」が起きました。それによって、アメリカはアフガニスタンという小さな国を爆撃しました。さらには、イラクにも攻め込みました。アメリカには、「われらこそ力があって正義の国である。われらは正しいのだ」という強烈な思いがあります。だからアメリカは「正しいわれらを侮辱した者は許さない」と言わんばかりに、国民の愛国心を風船のようにふくらませ、戦争を始めたのです。
プライドとは、それほど危険なものなのです。

画像・AdobeStock

*  *  *

「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る