原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

心を具体的にとらえるには

アルボムッレ・スマナサーラ
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心に関する「ダンマパダ」の一節を、もう一つご紹介しましょう。

心はとらえ難く、軽々とざわつき、欲するがままにおもむく。
その心は制御したほうがよい。よく制御した心は、安らぎをもたらす。(35)

心はあまりにもその動きが速いのです。瞬時に笑いが起き、ときには怒りだします。心の動きに気がつくのは、とても難しいことです。あまりにも速いので、怒ったときはそれに気がつきません。手遅れになってから、まずいことをしたことに気がつくのです。お釈迦さまは「心をおさめたら、安楽をもたらす」と言われました。心が清らかになるように向上することが仏道なのです。そのためには、心というものを具体的にとらえなければなりません。

たとえば、怒りという感情があるとき、それを心のなかにさがしても見つかりません。しかし怒りの心は、荒々しい呼吸や、こわばった顔の表情、激しい心臓の鼓動、力の入った肩などとなって、具体的に体にあらわれます。その体の変化──自分の体の動き、呼吸、歩き方、動作、そして感情などの具体的な動きから、心をとらえていくのです。今、起きている心の動きをつかまえたとき、はじめて心をおさめることができるのです。そのように心をおさめる方法を、だれでも具体的に実践できる道として説いたのが、仏教なのです。

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