原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

日常のなかで心を観る

アルボムッレ・スマナサーラ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

3、歩く

だれにでも歩く時間があります。ジョギングでもいいでしょう。その際に、足の動きに気を向けるのです。
左、右と足の動きを確認し、足の動きを感じるのです。こうすると、1キロも歩けば疲れてしまう人でも、4キロの道のりを歩いても疲れを感じなくなるでしょう。
「右、左、右……」と足の動きを交互に確認しながら歩いていくと、脳のバランスもよくなります。「右」と確認すると、脳の左側が刺激されるからです。脳は刺激されればされるほど、体にいいのです。ただ歩くことに徹して、歩くことをよく味わうだけで、健康になります。

4、体の動きを確認する

ゆっくり、手を挙げてみる、足を運んでみる──このようにゆっくりとした動作に意識を向けると、心が落ち着きます。悔やんでいる無駄な時間がなくなって、心が清らかになります。
家事の場合でも、「洗います、掃きます」と、独り言を心のなかで言うように動作を確認してゆくだけで、自然と本来の智慧がわいてきます。
「ああなりたい、こうなりたい」という心を放っておくのです。今、この瞬間をここで徹底的にくつろぐのです。明日のことも昨日のことも意識しません。明日のことは、明日のことであって、今することではない。昨日のことも、もう終わったのだから、あれこれ考えても無駄です。

実際に生きているのは、今の瞬間だけ、今というこの瞬間が本番なのです。未来はどうなるのかわかりません。わからないことは放っておくのです。
今の瞬間の自分を観ていくだけで、自分に必要なものが自然と備わってくるのです。要は気づくこと、心に起こることを確認することだけです。修行という気持ちでやらないで、リラックスしながら実践することです。

 

*  *  *

「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る