原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

ありのままの自分を明確に観る

アルボムッレ・スマナサーラ
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はじめての人には、歩く瞑想が入りやすいと思います。眠くなりませんし、早く落ち着きます。体と心の調和が速やかに実現するやり方なのです。歩くというシンプルな動きによって、心と体が一体となり、落ち着いた心境に至ることができます。

ポイントは、体の感覚を丁寧に味わうことです。たとえば呼吸をするときには、吸う息と吐く息を、体全体で味わうのです。あまりにもシンプルすぎてつまらないと感じる人もいるでしょう。どこかへ逃げだしたくなるかもしれません。しかしそこから逃げずに「今、ここ」に意識を集中し、その状態をたもちつづけていれば、いつの間にか驚くほど心が成長していきます。体の動きと心の働きが一体になることが重要なのです。一人が落ち着いてくると、その波動によって他の人も落ち着いてきます。心のエネルギーが伝わっていくのです。

息を吸う、吐くという呼吸の動きを一つ一つ味わい、楽しむことができれば、それは人生を楽しむことにも通じます。しかし、これを「修行だ」「訓練だ」という思いで実践したら楽しくありませんし、気づきも生まれません。

また実践していくと喜びが生じてきますが、その喜びに執着しないことも大切です。淡々と、実践するのです。実践をつづけていけば、かならず落ち着いた人格が培われていきます。人間は落ち着いていることが魅力なのです。

成長は自分では気がつかないものです。ちょうど植物の成長のようなものです。種から花が咲くまで、瞬間瞬間にはわかりませんが、確実に花は咲いていくのです。

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「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited)
発行日:2003年10月
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