原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

「知っている」と思う者が愚か者

アルボムッレ・スマナサーラ
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愚かな者は、自分にありもしない尊敬を得ようと願う。
修行僧らのあいだでは高い地位を望み、僧院にあっては支配権を望む。

                   「ダンマパダ」(73)

愚か者の特徴は、自分が賢者に見られたいということです。そういう人にかぎって有名な先生につこうとします。偉い先生のそばにいることをありがたがるのです。「自分はすごいぞ、知っているぞ」と見せかけるために、賢者のそばにいます。朝から晩まで、先生につきっきりでいるのです。「わたしは、あの大先生の弟子です」と言いたいのです。見栄を張って威張ろうとします。

しかし、いくら立派な先生のそばにいても、賢者に見られたいという気持ちでいたならば、なにも学ぶことはありません。「わかりたい、学びたい」という人は、ほんの少しでも真理に触れたならば、すぐにそれを理解することができます。あたかも舌の先がちょっとでもスープに触れたら、その味がわかるように。

「自分はなにも知らない」として学びつづける人は、かならず花が咲きます。人はいつ学ぶのが終わるかというと、それは死ぬ瞬間です。「学ぶのは死ぬまで。教えてもらうのは死ぬまで」。インドにはそういうことわざがあります。

*  *  *

「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税
発行日:2003年10月
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一悟
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税
発行日:2005年11月
原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2009年6月
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